健康長寿のためには‘体感’の良い‘乳酸菌生産物質’が大切です

腸内細菌研究の世界的権威-光岡知足×光英科学研究所社長-村田公英 特別対談


2017年4月12日、都内某所にて

向かって左が光岡知足先生
腸内フローラ研究のパイオニアである、光岡知足・東京大学名誉教授と、再びお話しする機会を得られました。


片や、弊社社長・村田公英は、腸内フローラが作り出す「乳酸菌生産物質」の研究に携わって半世紀……。


この二人が、昨今の腸内フローラを巡る問題をテーマに対談いたしました。


articleicon「腸内フローラ」が作る物質が健康のカギを握る

 村 田  2015年2月のNHKスペシャルで、「腸内フローラ」に関する番組が放送され、世の中にその言葉が一世風靡しましたが、そのサブタイトルに「人の健康は腸内フローラが作る物質が決定する」が採用されていました。


これは光岡先生の著書に出てくるキーワードですから、番組の構成についてNHKから相談があったかと思いますが如何でしたか。




 光 岡  いいえ。残念ながら番組も見ていません。誰が出ていましたか?どのような内容でしたか?




 村 田 公共放送ですから、腸内フローラ研究の世界的権威の光岡先生に監修の依頼が来るのが筋かと思いますが、番組では腸内フローラ研究が本格化したのは6年前からと放送されていました。


光岡先生が理化学研究所でチームを組んで腸内フローラの研究開発を始められたのは50年前の1967年でしたね。それと、アメリカの事例として便移植が大きく取り上げられていたのにも違和感を覚えました。



50年前に光岡軍団が腸内細菌研究を牽引
 光 岡 米国で便移植の事例があるのは知っていますが、あれは問題のある事案ですね。


腸内細菌の研究を本格化したのは、私がドイツ留学から帰国後の67年でした。ある企業の研究員が15人程のチームで、私の帰国を待ち構えるようにして始まりました。当時は腸内細菌の培養法の開発から、その菌群レベルの構成と性状を調べるための装置の開発もしました。昼夜分かたず研究に没頭し、そのチームは周囲からは「光岡軍団」と呼ばれたものです。


 村 田 「腸内フローラ」というと腸内細菌が主役になりますが、健康長寿のための腸内菌のあり様はどのようなものでしょうか。


 光 岡  人の腸内フローラは大きく分けて乳酸桿菌、ビフィズス菌、腸球菌などの乳酸菌群(善玉菌)と、ウェルシュ菌、大腸菌、ブドウ球菌などの腐敗菌群(悪玉菌)、そしてその他の嫌気性菌群(日和見菌)の3群に分けられます。


人の健康維持に働く有用菌「善玉菌」と人の健康阻害に作用する有害菌「悪玉菌」。今ではすっかりお馴染みの言葉ですが、この言葉を使ったのは私が最初だろうと思います。


腸内にはこの3つの菌群が一定のバランスを持って棲みつき、腸内フローラを形成しています。常に善玉菌が優勢の状態を保っておくことが健康長寿のカギとなるのです。




 村 田 腸内フローラのために良い食餌とはどんなものでしょうか。特に食物繊維の役割は大きいと思いますが。




 光 岡 そうです。食物繊維は腸の蠕動を盛んにし、便の量を多くします。健康な人ほど便の量が多いということは、腸内フローラのバランスが整っていて菌の数が多いことを意味します。


やはり肉食やタンパク質より、和食を中心に据えた方が腸内フローラを健全に保つには良いようです。ただ、これまで乳酸菌のエサとなる食品を摂る「プレバイオティクス」やヨーグルトのような「生きた乳酸菌」を含む食品を摂る「プロバイオティクス」が推奨されてきましたが、それでは「死んだ菌を摂っても意味はない」ということになる。


それは正しくありません。


実際には「生きた菌・死んだ菌に関わりなく、菌体制分や菌が作り出した物質が腸に作用するのです。私は、「生きた菌」を重視しすぎるいびつさを改善するために「プロバイオティクス」に代わる「バイオジェニックス」という新しい概念を提唱しています。



ヒトの腸内フローラに近付ける努力を
 村 田 私共は、腸内フローラが作り出す健康を決定付ける物質として、光岡先生の「バイオジェニックス論」の中の「乳酸菌生産物質」の研究を50年に渡り続けてきました。


なるべく人の腸内フローラの作り出すものに近付けるために、共棲培養によって16種35株の善玉菌軍団に集大成。体の外で大豆の豆乳を培地にして発酵させ、菌の代謝物質である「乳酸菌生産物質」を作り出しました。

乳酸菌そのものでなく、乳酸菌が作り出す健康物質で、数多くの健康食品メーカーに役立てていただいておりますが、光岡先生のご意見をお聞かせください。


 光 岡 それは良いことです。そもそも乳酸菌は体に良いものだけを生み出す性状を持っています。乳酸菌の作るものに毒になるものはないのです。


試行錯誤の末辿り着いた菌群を、食品分析センターで同定したところ16種35株という結果だったということですが、それで必要十分です。


私の唱えるバイオジェニックス論では、乳酸菌の概念として、死菌も含めた菌体成分と代謝産物(乳酸菌生産物質)を合わせて重要だと見ています。つまり、乳酸菌が発する粘性のある成分や、乳酸菌を培養した培養液も貴重なものなのです。


articleicon食餌は「体感」が大切 「乳酸菌」の正しい理解を

 村 田 乳酸菌ブームの影響か、今年に入って大手食品企業が乳酸菌そのものを1食当たり100億個配合して10品目以上、上市してきています。


ところが、乳酸菌の数にしても光岡先生が1日1兆個必要と仰っている数に到底達していないばかりか、その乳酸菌は菌を培養した液体を遠心分離して菌体だけを集め、その上きれいに洗い流しております。


従って菌体付着成分や代謝物質は存在していません。これは出来るだけ菌を多く集めるための手法なのです。



乳酸菌の菌体成分や代謝物こそが
腸管免疫を活性化させる
 光 岡 それでは肝心のものを捨てていることになる。もったいない事です。


乳酸菌の菌体成分や代謝物質が腸を刺激し腸内フローラを改善し、「腸管免疫」を活性化させるのですから、ヨーグルトを毎日大量に摂るのが大変だという人は、菌種や菌体成分、代謝物質を豊富に含んだ乳酸菌のサプリメント(乳酸菌生産物質、乳酸菌生成エキスなど)を摂ることをお薦めします。
大手食品メーカーも折角乳酸菌に着目したのなら、代謝物質にも目を向けて欲しいものです。


 村 田 有難うございます。お陰様で当社の「乳酸菌生産物質」も腸内環境に何の抵抗もなく受け入れてもらっているようで、加齢により十分に得られなくなっている自前の代謝物の代わりをしてくれて、「善玉菌」が勢いを取り戻す助けにもなっているようです。
実際に当社製品を配合したサプリメントは確実な「体感」があるようで、長年に渡って支持され続けています。その需要増に備えて、この秋には工場を増設する予定です。





身体の声に耳を澄ませ、
何を食べれば元気になるか知ることが大切
 光 岡 確かに「体感」は大切です。人生100年の時代に「健康長寿」で人生を全うするには、まず「身体の声」に耳を澄ませ、何を食べれば自分が元気になるかを判断することです。


私自身、一消費者として食餌やサプリメントを摂る中でまず大事にしてきたのは、自分自身の「体感」であり、お腹(腸)の調子です。自分なりの体調管理に努め、腸を元気にする生き方を身に付けるためのヒントは、皆さんのお腹の中の腸内細菌が教えてくれるのです。


 村 田 光岡先生、有難うございました。私共も微力ながら健康長寿社会の実現のためにも、光岡先生の「バイオジェニックス論」を基軸とした、「乳酸菌信仰」ではない乳酸菌への正しい理解を広め、食品分野のみならず、できれば医薬品分野へも「乳酸菌生産物質」を普及することに努めて参ります。


向かって左から光岡教授、弊社社長・村田、同専務・小野寺


光岡知足 (みつおかともたり)
1930年、千葉県生まれ。東京大学農学部獣医学科大学院博士課程修了。
1958年、医科学研究所に入所。ビフィズス菌などの腸内細菌研究の世界的権威として同分野の樹立に尽力。現在、東京大学名誉教授、理化学研究所名誉研究員。


村田公英(むらたきみひで) 光英科学研究所社長
1940年山口県生まれ。義報社に入社。大谷光瑞農芸化学研究所で乳酸菌生産物質の生みの親である正垣一義氏に師事。
1969年、光英科学研究所設立。以降50年近くに渡って乳酸菌生産物質の研究・開発と製造・販売に取り組む。

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