2015.08.03

私的腸内細菌論

第37回 腸内フローラとクオラムセンシング

私たち人間が、言葉を用いて他人とコミュニケーションをとりながら生活しているように、腸内フローラを形成している細菌たちも常にコミュニケーションをとりながら生命活動を営んでいます。

 

ヒトと違って目も口も耳も鼻も無い細菌は、増殖する際に栄養物を摂りながら体外へ代謝産物を放出して、これでコミュニケーションをとっています。

 

クオラムセンシング

腸内細菌にとって腸内という環境は生存競争の非常に激しい場ですが、それは100兆個以上もの細菌が腸内フローラを形成して高密度に生息しているからです。

 

ここで注目されるのが、腸内フローラを正常に保つための遺伝子の働きのひとつ、すなわち「クオラムセンシング」です。

 

細菌が増殖して菌数が多くなり、ある一定の数に到達すると特定の遺伝子が発現します。そして腸管内にいる細菌とコミュニケーションをとって、腸管に定着させるのです。

 

これを学術的にはクオラムセンシングと申しております。

 

ここで、たまたま入って来た悪玉菌がクオラムセンシングを行い遺伝子が発現すると、病原因子や毒素など攻撃的なものが産生されてしまいますが、このような場合もいち早く腸内フローラからの遺伝子で制御されます。

 

この制御された代表的なものが、私たちがよく知るペニシリンです。

 

このようにして、正常で美しい腸内フローラは一生に渡り、ヒトの健康を決定づけるチカラを維持しているのですから、素晴らしいことだと思います。

 

健康長寿のためには自分の腸内フローラが正常に活動できるよう、食生活やストレスには気を配る必要があることはもちろんですが、病気や加齢などで腸内フローラがノーマルな状態でなくなったときには、外部から強力な補佐をする乳酸菌生産物質の出番となります。

加齢による腸の劣化は、食物で修正することは難しいので、常に体外からの乳酸菌生産物質によるメンテナンスを続けることが望ましいと思います。

 

細菌の世界にも数の理論が?

クオラムセンシングの語源は、英国の議会における「定足数」(議決に必要な定数)から成っていますが、細菌が一定数以上となって初めて特定物質が産生されることを、政治的な合議決定になぞらえて呼ばれているのです。

 

あたかも、現在の国会にて日本の将来を左右する法案が審議されています。国民としてノーマルなフローラになってもらいたいと願うばかりの今日この頃です。


光英科学研究所 村田公英 会長ブログ【私考欄】は絶賛更新中です。社長時代のブログは、『「乳酸菌生産物質」に賭けた人生1・2(村田公英の社長ブログ『私考欄』より)』に書籍化されておりますので、本サイト掲載以外の回は書籍にてお楽しみください。

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